課文

次世代送電網と再生可能エネルギー

ある日、大都市で突然停電が起こったとする。信号が機能しない。地下鉄や電車などの交通機関を利用しようにもできない。水道が止まり、オフィスや家庭では空調設備を使うことができない。都市全体がパニックに陥り、生活も産業も成り立たなくなってしまう。    

現在、世界の電力消費量は増え続けており、電力の確保は各国で大きな課題となっている。地球環境に配慮しながらも、電気を安全に無駄なく供給することが求められる今、注目されているのが「次世代送電網(スマートグリッド)」、そして「再生可能エネルギー」である。

これまで発電所で作られた電気は、送電線を通って、各家庭や工場などに送られるだけだった。一方通行で、一度送ったら送ったきりという単純極まりないシステムだ。これに対し、次世代送電網とは、ひと言で言えば、IT(情報技術)を活用し、時間的に、または空間的に、電気を余っている所から足りない所へ融通して電気の無駄を抑える送電システムである。

次世代送電網はさまざまな技術が組み合わせられて実現するものである。家庭や工場には、次世代電力計(スマートグリッド)が設置され、電力使用量のデータが記録される。使用量はネットワークを通じて電力会社に伝えられ、そのデータをもとに、コンビュータが電力の使用量と供給量のバランスを制御する。さらに、超電導送電線によって、これまで電気抵抗のために送電の途中で失われていた電気の損失をほぼゼロにすることができる。また、工場や各家庭に高性能蓄電池を設置したり、電気自動車の電池を活用したりすることで、余った電気をためておくことも可能だ。ためた電気は電力需要が多い時間帯に使用することができる。

電気の使用量は、1日のうちでも、また1年の間でも、大きく変動するが、現在の主要な発電方式である火力や水力や原子力では、細かい出力の調整は難しい。さらに、現在の送配電設備は、冷房の使用が多い真夏の昼間など、電力需要がピークに達した時にもパンクすることのないように、かなりの余裕を持って作られている。だから、発電所建設のコストも膨大になるし、夜間など、電力需要の少ない時には、電気が余ってしまうことになる。次世代送電網により電力需要に合わせて発電量を自動的に調節することで、このような無駄を省くことができる。

一方、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、環境への負荷が小さく、自然の営みから半永久的に得られる未来のエネルギーとして期待されている。反面、自然のエネルギーを利用した発電方法の大きな欠点は、発電量が地形や天候に大きく左右されるということである。次世代送電網でこのような変動を吸収することができれば、これらのエネルギーの導入をより積極的に促進することができる。

世界各国は今、次世代送電網の整備、そして再生可能エネルギーの利用に向けて動きつつある。日本の場合、石油や石炭などの燃料資源をほとんど輸入に頼っているという問題があることから次世代送電網は主として再生可能エネルギーの使用を促進するためのインフラとして位置づけられている。他方、急速な経済発展に伴い電力需要が急増する中国では、国を挙げて再生可能エネルギーの開発を行っている。先行しているのは発電コストの安い風力発電だが、大規模な太陽光発電プラントの建設計画もあり、送電には次世代送電網の技術が用いられるといわれている。

特に太陽電池生産において、2008年、世界第1位の中国、第2位のヨーロッパについで、日本は第3位のシェアを占めている。日中両国には、次世代送電網や再生可能エネルギー活用の技術開発の分野において、主導的な役割を果たすことが望まれている。

新出語彙2

じせだいそうでんもう(次世代送電網)[名] 下一代输电网
さいせいかのうエネルギー(再生可能~) [名] 可再生能源
くうちょう(空調) [名] 空调
パニック[名] 恐慌
陥る(陥る) [动1自] 陷入;掉入
きょうきゅうする(供給~) [名·サ变他] 供给,提供
スマートグリツド [名] 高性能电网
そうでんせん(送電線) [名] 电缆,电线
いっぽうつうこう(一方通行) [名] 单向通行
きわまりない(極まりない) [形1] 极其,再也没有
じょうほうぎじゅつ(情報技術) [名] 信息技术
かつようする(活用~) [名·サ变他] 有效利用,实际应用
くうかん(空間) [名] 空间
ゆうずうする(融通)[名] 调配,通融;随机应变;畅通
そうでん(送電) [名·サ变自他] 输电,送电
くみあわす(組み合わす)[动1他] 配合,编组
じせだいでんりょくけい(次世代電力計)[名] 下一代电表
スマートメーター[名] 智能电表
ネットワーク[名] 网络
ちょうでんどうそうでんせん(超電導送電線)[名] 超导电缆
ていこう(抵抗)[名·サ变自] 阻力,电阻;抵抗,反抗
ゼロ[名] 零
こうせいのうちくでんち(高性能蓄電池) [名] 高性能蓄电池
ほうしき(方式)[名] 方式
すいりょく(水力) [名] 水力
そうはいでん(送配電) [名] 输配电
まなつ(真夏) [名] 盛夏,炎夏
ピーク [名] 顶峰,峰值
パンクする [名·サ变自] 超过负载量而无法正常运作,停止工作;(轮胎)爆胎
よゆう(余裕) [名] 余地,富余
じどうてき(自動的)[形2] 自动的
はぶく(省く)[动1他] 减少,节省;省略
たいようこう(太陽光) [名] 太阳光
いとなみ(営み) [名] 活动,运行
はんえいきゅうてき(半永久的)[形2] 半永久性的
はんめん(反面) [副] 另一方面
さゆうする(左右~) [名·サ变他] 影响,左右
そくしんする(そくしん~) [名·サ变他] 推动,促进
インフラ [名] 基础设施
いちづける(位置づける) [动2他] 定位,确定
たほう(他方) [副] 另一方面,面
きゅうぞうする(急増~) [名·サ变自] 激增,急剧增加
せんこうする(先行~) [名·サ变自] 走在前面,优先实行,先行实施
ブランド [名] 工厂(设备)
たいようでんち(太陽電池) [名] 太阳能电池
つぐ [动1自] 接着,接……之后
シェア [名] 市场占有率,份额
しゅどうてき(主導的) [形2] 主导的,主动地

くにをあげる(国を挙げる) 举国,全国

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