シリーズ累計1650万部を突破し、4年ぶりの新作『涼宮ハルヒの驚愕』(角川書店)も大ヒットしている「ハルヒ」シリーズ。SF評論家の藤田直哉さんは、その人気の理由を、こう分析する。

「『ハルヒ』にはSF魂をくすぐる言葉やガジェットが随所に出てきます。ライトノベルだからと敬遠する人がいるかもしれませんが、本を読んできたキャリアのある人ほど、その裏にある膨大な知識と情報に気づき、めまいを覚えるかもしれません。それが『ハルヒ』の大きな魅力だと思います」(藤田さん)

「ハルヒ」の凄さは、あの筒井康隆までもが反応。雑誌『群像』(2007年7月号)の東浩紀との対談で、シリーズの中では『涼宮ハルヒの消失』が一番面白いと語っている。日本SF界を牽引してきた大御所作家をもうならせたのは、一体どこなのか。

藤田さんは、「ハルヒそのものが読者の寓意」と指摘しながら、「ハルヒ」が珍しいのは、普通の人として登場する「キョン」が、SF的な出来事に巻き込まれていくのに、それをあまり問題にしない点にあるという。心を動かさず、むしろ、そのまま受け入れて楽しむというスタンスなのだ。

さらに、「『ハルヒ』の中には大統領や軍隊など権力や大きな組織は出てこなくて、キョンは友達という端末を通してのみ情報を得ています。これは過去のSFにはあまりなかった設定。そういう意味ではハルヒはゼロ年代の作品であり、ネット社会に生きる私たちの情報への向き合い方と重なる点が多い」とも。

前作の『分裂』でシリーズは新局面に入り、自分たちの行動が未来に影響を及ぼすモチーフが明確化。

「このことは大いに注目したい点ですね。これはSFでいうところの、未来はすでに決まっていて、何をしても変わらないという決定論を谷川さんが選ばなかったという表れのような気がします。おそらく新作の『驚愕』では新たな展開があるはず。そういう意味でも、新作はシリーズの大きな節目になる作品となるでしょう」

SF通をもうならせる「ハルヒ」。過去のSFにとらわれない展開が、ますます目を離せなくなる理由のひとつといってよいだろう。

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