「数学の公式や英単語はなかなか覚えられないのに、一目惚れした女の子の名前やメールアドレスは一発で覚える」

“明明数学公式、英语单词怎么都记不住,但一见钟情的女孩子的名字和电子邮箱地址就一下子记住了”

「仕事で訪れた街の様子をほとんど思い出せなくても、宿泊先のホテルのエレベーターの故障で閉じ込められたときの記憶だけはっきりと覚えている」

“就算几乎想不起来工作时前往的那条街道的样子,但却清楚记得在下榻酒店因故障被关在电梯里的事情”

あるある、とうなずいた方も多いと思うが、一般的に強い情動(感情)を伴うエピソードほど鮮明に記憶に留まることが知られている。

相信许多人都有过以上类似的经历,可知一般来说,伴随着强烈情感的情景,会在人们的脑海中留下抹不去的记忆。

私たちは日々多くの出来事に遭遇するが全てを記憶していては脳のキャパを超えてしまう。通勤途中の何気ない風景、電車で向かい合った乗客の顔、ツマラナイTV番組など忘れても支障がないエピソードは数時間ほどで記憶から消えてしまう。

我们每天要遭遇许许多多的事情,如果全都留在记忆里,脑容量根本存不下。上班路上不经意间看到的风景、在地铁里对面乘客的面容、无趣的电视节目等那些就算忘了也对生活没妨碍的事情,没几个小时就会从记忆里消失了。

一方、記憶の一部は長期間にわたって残る。大事なエピソードを取捨選択し、長期間、時には生涯にわたって持続する長期記憶へと変える役割を果たしているのが脳の中にある海馬である。この脳内作業は「記憶の固定」とも呼ばれる。強い恐怖や喜びなどを伴うエピソードの場合は、情動に関わる脳内回路が海馬に働きかけて記憶の固定作業を促すことが分かっている。情動に結びついた確固たる記憶であることから情動記憶とも呼ぶ。

另一方面,一部分记忆被长期保存着。选择取舍重要的事情,发挥长时期、甚至一生的长时记忆进行存储功能的便是脑内的海马体。这种脑内表现被称之为“记忆的巩固”。伴随着强烈恐惧或喜悦的情景,会使得与情动相关的脑内回路促进海马体工作而将记忆进行巩固。而与情动相连的固定记忆,被称为情动记忆。

この情動記憶、時には忘れたくても忘れられない忌まわしい記憶となって人を悩ますこともある。「心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder、PTSD)」はその代表である。

这类情动记忆,常常成为想忘却忘不掉的不愉快记忆,困扰着人类。其中,“创伤后应激障碍(PTSD)”便是具有代表性的记忆之一。

学習後に眠ったほうが記憶に残る

在学习后睡眠,更容易记得牢

PTSDでは大震災や水害、交通事故、幼児期の虐待、性的暴力などの過去のトラウマ体験を思い出させるような場面や音声をトリガーにして、強烈な恐怖感が湧き上がる。このフラッシュバックと呼ばれる現象のために行動半径が狭まったり、うつ気分や不安感が長期間にわたって残るなどして生活の質が大きく低下してしまう。

所谓PTSD,即指在经历过大地震、水灾、交通事故、幼儿期受到虐待、性暴力等创伤后,当类似的场景或声音出现时,会导致人产生强烈的恐惧感。这种被称为闪回的现象,会让人举止局促,并长时期处于忧虑、不安的情绪中,生活质量大打折扣。

PTSDを引き起こすようなトラウマ体験の直後には強い不眠が生じることが多い。辛い体験によるごく当たり前のストレス反応だと考えられてきたが、実はこの強い不眠はトラウマ記憶をできるだけ固定しないように一役買っているのではないかと考える研究者がいる。ちょっと唐突に聞こえるかもしれないが、「学習後の睡眠で記憶が向上する」ことを考えるとそれなりに説得力のある仮説である。

人在经历了引起PTSD的创伤之后,大多会导致严重的失眠。虽然这种艰辛的遭遇被当作是理所当然的压力反应,但有研究者表示,其实严重失眠是在主动承担着尽可能不要被巩固那些记忆的作用。听起来可能有些冒昧,“在学习后睡眠,更容易记得牢”这种考量,是一种具有一定说服力的假设。

「睡眠で記憶が向上する」といってもいわゆる「睡眠学習」ではない。一般的に睡眠学習とは睡眠中に新たな事柄を学習(記憶)することをさし、残念ながら科学的に効果が実証された睡眠学習法は現在まで見つかっていない。それに対して「睡眠で記憶が向上する」とは覚醒中に獲得した記憶を睡眠中にしっかりと固定する現象をさす。

“睡眠有助于记忆”话虽这么说,但并不是所谓的“睡眠学习”。一般来说,睡眠学习指的是在睡眠中学习(记忆)新的事物,但遗憾的是,从科学性来说,至今尚未找到能被证明有效果的睡眠学习法。而相对的,“睡眠有助于记忆”指的是在觉醒时所获得的记忆,能在睡眠中进行加强巩固的现象。

睡眠と記憶の研究は1990年代後半から活発になり、2000年代に入って多数のユニークな研究が行われた。現在科学的に証明されているのは、同じ学習をして同じ時間経過後にテストをした場合、学習後にいったん睡眠をとった方が起き続けているよりも成績が良いということである。

睡眠与记忆的研究在1990年代后半开始活跃起来,进入2000年代之后,各种独特的研究纷至沓来。现在已被科学证明的是,一样学习并经过相同的时间后进行测试,学习后去睡一觉的人比一直醒着的人成绩要好。

例えば、朝に無関係な単語のペアを多数記憶し、8時間後の夕方に片方の単語からペア語を思い出すテストを受けるグループと、夜に記憶してからいったん眠り、8時間後の朝にテストを受けるグループでは、後者の方が成績は良い。

例如,某个小组在早上背诵无关联的单词配对,8小时后的黄昏,接受从一个单词联想到配对单词的测试,与在夜晚背诵后睡一觉,在8小时后的早晨接受测试的小组相比,后者的成绩更好。

睡眠中に脳が復習していた

睡觉时,脑内在复习

朝に記憶したグループではテストまでの8時間の間に何度も復習できるのだから成績がよくなりそうなものだがそうではないのである。実験動物の脳で学習後の睡眠中の海馬の神経細胞を観察した研究では、覚醒中に学習しているときと同じパターンで活動しているのが観察されている。これはリプレイ現象と呼ばれ、文字通り睡眠中に記憶に関わる神経細胞が復習しているわけである。しかも、覚醒中のように他の雑念が入らないので効率が良い。

在早上进行背诵记忆的小组,看似在到考试前的8小时内,可以多次复习,成绩会更优秀,并非如此。在动物脑体实验中,观察学习后睡眠中的海马体神经细胞的研究表明,发现睡着后的活动模式和觉醒时在学习时是一样的。这被称为重演现象,如文字所示,睡觉时与记忆相关的神经细胞正在进行复习的工作。而且,比起醒着的时候,杂念少、效率高。

単語や出来事の記憶はその内容を言葉で説明できるという点から陳述記憶と呼ばれる。対してピアノの指使いや平均台上でのバランス感覚など言葉で説明できない記憶は非陳述記憶と呼ばれ、その固定にも睡眠は有効であることが分かっている。

单词、发生的事情这类记忆的内容,是可以用语言说明的,所以被称为陈述性记忆。相对的,钢琴的演绎指法、在平衡木上的平衡感等无法用语言进行说明的记忆,则被称为非陈述性记忆,睡眠也会对它们产生有效的巩固作用。

さらに、睡眠中には大事な記憶を固定するのと同時に、必要性が低くなった記憶を消去しているらしい。実際、学習後の睡眠中に海馬や大脳皮質における神経細胞間の接合部の大きさや数を計測すると、新たに増える部分もあれば、逆に減ってしまう部分もあることが分かっている。不要になった神経連絡を消去する作業は「刈り込み」と呼ばれ、限られた脳機能を効率よく使うための方法らしい。

而且,睡着的时候,在巩固重要记忆的同时,还能消除不被需要的记忆。实际上,在测量学习后睡眠中海马体和大脑皮层神经细胞之间结合部位的大小和数量可以得知,既有新增的部分,也有减少的部分。消除不必要神经联络的工作,被称为“修整”,是一种有效利用有限脑功能的方法。

話をPTSDに戻すと、強烈でネガティブな情動体験をした直後に睡眠を十分にとると、忌まわしい記憶がしっかりと長期に固定されてしまう。トラウマを経験した人が不安を抱えながら眠れぬ夜を過ごすのはとても辛いことだが、少なくとも記憶固定を弱める効果は期待できるのではないかと一部の研究者は考えているわけである。

咱们再说回PTSD症状,在经历了强烈的消极情动之后,要是睡太饱,那么那些不愉快的记忆就会牢牢地、长期地固定下来。虽然人在经历了创伤后,怀着不安的情绪度过失眠之夜非常痛苦,但一部分研究者表示,至少可以让记忆巩固的效果减弱。

不安で眠れぬ夜にも意味がある。そのように考えるといささかでも気分が楽になるだろうか。

因不安而不眠的夜晚,也是有意义的。若能这样想,兴许能让心情轻松一点吧。

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