むかしむかし、あるところに、黒牛の闘牛を飼っている男がいました。

很久很久以前,在某个地方,有个男子养了一头黑色的斗牛。

その闘牛は角が人間の腕よりも太くて、角あわせをしても一度も負けた事がありません。

那头斗牛的角比人的手臂还粗,即使在斗角比赛中也从来没有输过。

ある年の角あわせの日、男は黒牛を連れて闘牛会場へ行くと、世話役の人に言いました。「おれの闘牛のクロに、当日になっても参加の案内が来なかったが、何かの手違いか?」

某年斗角日,男子牵着黑牛去了斗牛场,对主持人说道「即使今天,也没有参赛者来挑战我的黑牛,是不是搞错了?」

すると世話役は、申し訳なさそうに言いました。「すみません。実は、クロがあまりにも強いため、どの参加者もクロと闘うのは嫌だというのですよ」

主持人一脸歉意的说道「不好意思。其实,是你的小黑太强了,不管是哪个参赛者都不想挑战你的小黑」

「そうか、確かに、負けると分かっている試合など、誰もしたがらないもんな」男は仕方なく、クロと一緒に家に帰りました。

「这样啊,的确是,明知道会输的比赛,没有人会想参加的吧」男子没有办法,只好牵着小黑一起回家了。
 
せっかく闘えると思っていたクロも、何だかがっかりした様子です。

原本以为可以大战一场的小黑很失望的样子。

「すまねえな、クロ。いまにきっと、お前が全力で闘えるような相手を探してやるからな。だから今は、こらえてくれ」男はクロの世話をしながら、毎日そう言い聞かせました。
「抱歉啊,小黑。现在你一定在寻找实力相当的对手吧。所以现在一定要忍耐一下啊」男子一边照顾小黑,一边每天这样安慰它。

ところがある朝、男が牛小屋に行ってみると、クロの姿がないのです。

某天早上,男子去牛窝,可是没有小黑的身影。

「クロ! どこへ行った!」男はびっくりしてクロを探しましたが、どこを探してもクロはいません。

「小黑,你在哪里!」男子吃了一惊,马上寻找小黑,可是到处都找不到小黑。

そこで仕方なく牛小屋で待っていると、しばらくしてクロが帰って来ました。

没办法,只能守在牛窝等,不一会儿小黑回来了。

「クロ! 今までどこに・・・」男はクロを叱りつけようとしましたが、クロの体を見てびっくりしました。

「小黑!你到哪里去了···」男子原本打算好好教训一下小黑,可是看到小黑的身体却吓了一跳。

今までどんな相手と闘っても、かすり傷一つ負わなかったクロが、全身生傷だらけなのです。

现在为止,不管和什么样的对手相对抗,从来没有负过伤的小黑居然全身是伤。

しかもひどく疲れている様子で、そのまますぐに眠ってしまいました。

而且,看似非常疲惫,不一会儿就睡着了。

しかしクロの目は、どの闘牛と闘ったときよりも生き生きしていました。

但是,小黑的眼神却比和任何牛战斗时都有神。

次の朝、男が起きた時には、もうクロはいませんでした。そして戻って来た時には、昨日よりも生傷が増えていたのです。

第二天,男子起床时,小黑又不见了。而且,回来时满身是伤,比昨天的更加严重。

(クロのやつ、いったいどこへ行って、誰と闘っているのだ? ・・・明日、確かめてやる)

(小黑这家伙,到底到哪里去了,和谁战斗了?···明天,一定要确认一下)

その次の朝、男はまだ暗いうちに起きて牛小屋へ行くと、抜け出して行くクロの後をつけました。

第二天早上,男子在天还没有亮的时候就去了牛窝,跟在走出去的小黑后面。

クロは山の奥へと入っていき、林に囲まれた広場のような草地へとやって来ました。 そして全身に力を入れると、モーーゥ!と、一声鳴きました。

小黑走进山里,来到了被树林包围的一片空旷草地上。然后使出浑身的劲,大吼一声哞--

(クロがこれほど気合いを入れるのは始めてだ。いったい、どこの牛が相手だ?)男がそう思っていると、やがて向いの林の中から、クロに負けないほど大きな体のクマが現れたのです。

(小黑从未如此全力以赴过。这对手到底是何方神圣呢?)男子这样想着。这时候,终于从林子里走出来一只体型一点都不输给小黑的大熊。

(あっ、あのクマは!?)そのクマは、最近あちこちの村の家畜を襲っている大グマで、何人もの猟師が退治に出かけたのですが、反対に、何人もの猟師がそのクマに殺されているのです。

(啊,那只熊是!?)那只熊是最近到处袭击村里家畜的大熊啊,虽然有很多猎人想猎杀这只大熊,但是不但没有捉到,反而有很多猎人被大熊所杀。

クロとクマはしばらくにらみ合っていましたが、先にクロが仕掛けて、頭を下げると激しい勢いで突進しました。

小黑和大熊互相瞪了会,然后小黑先按捺不住了,低下头摆出进攻架势。

しかしクマは仁王立ちになると、太い前足でクロの頭を叩きつけます。

但是大熊却只是弓起身子,用胖胖的前脚按住了小黑的头。

クロはたくみにその一撃を角で受け止めると、再びクマの体に突進しました。

小黑巧妙地用角躲过那一击,再次像大熊进攻。

クロとクマはほぼ互角で、それから何時間も闘いましたが、やがて疲れ切った二頭は、お互いに背中を向けると、クマは森の中へと、クロは自分の牛小屋へと帰っていきました。
小黑和大熊相互决斗了几个小时,最后都疲惫不堪,就背转身子各自回家。大熊走向树林,小黑回到了自己的牛窝。

「そうか、クロはあの大グマと毎朝闘っていたのか」その日の真夜中、男は何とかクロを勝たせてやろうと、クロがまだ眠っているうちに、クロの角にべっとりと油を塗りつけてやりました。

「原来是这样啊。小黑每天早上都在和大熊战斗呢」那一天半夜里,男子无论如何都想让小黑取胜,就在小黑熟睡的时候,在它的牛角上涂满了油。

次の朝早く、またクロが出かけたので、男は後をつけました。

第二天早上,小黑又出门了,男子尾随其后。

昨日の広場には、すでに大グマが待っていて、クロがやってきたとたん、クロに突進してきました。

在昨天的广场,大熊已经在等着了,小黑一出现,大熊就发起了进攻。

クロも負けじと突進すると、大グマに体当たりしました。

小黑也毫不认输,拼命撞向大熊。

お互いにはね飛ばされた二匹は、すぐに起き上がると、今度は相手の隙を見つけるかのようににらみ合いました。

双方撞飞后马上站起来,这次,似乎想发现对方的漏洞般彼此凝视。

そして仁王立ちになった大グマは、太い前足をクロの頭に振り下ろしました。

然后弓起的大熊,用前脚按下小黑的头。

クロはその一撃を角で受け止めたのですが、クロの角には油が塗ってあったので、クマは前足を滑らせると、そのままバランスを崩してクロの角に自分の脇腹を突き刺してしまったのです。

虽然小黑用角阻止那一击,但是由于小黑的角涂满了油,所以大熊的前脚滑了一下,失去了平衡后,自己的侧腹刺进了小黑的角。
 
グォーーッ!

嗷--!

大グマは苦悶の叫びを上げると、クロの角で脇腹を突かれたまま、死んでしまいました。

大熊发出痛苦的叫声,就这样胁腹刺进角里,死了。

それを見た男は飛び上がって喜ぶと、クロに駆け寄って言いました。「クロ! よくやったぞ! この大グマめ、おれがお前の角に油を塗った事も知らずに突っ込んで、油に滑って死におったわ。わははははははっ!」

看到这一幕的男子高兴地跳了以前,跑到小黑身边说道「小黑!干的好!这只大熊完全不知道我在你的角上涂了油,就这样刺了进去。哇哈哈哈哈哈哈!」

でもクロは、少しもうれしそうな様子は見せず、反対に悲しそうな表情で死んだ大グマを見つめていました。

但是,小黑一点都没显示出高兴的样子,相反的,却是无比悲伤地看着死去的大熊。

正々堂々と闘ってきた大グマに、角に塗られた油のおかげで勝った事を恥じているのでしょう。

对堂堂正正战斗的大熊,因为自己在角上抹了油而取胜,似乎为此感到羞耻。

クロは近くの木で角に塗られた油をこすり取ると、そのまま牛小屋に帰っていきました。

小黑在附近的树上把角上抹着的油摩擦掉,就这样回了牛窝。

そしてそれからは、男がどんなにエサを食べさせようとしても、エサを一口も口にしないのです。

在那之后,不管男子用什么食物引诱它,它都不肯吃。

そして骨と皮ばかりになった頃、クロは牛小屋を抜け出して、あの山奥の広場で大グマ死骸に寄り添って息絶えたのです。

在皮包骨头的时候,小黑走出牛窝,到那山里的广场上,躺在大熊旁边咽下最后一口气。

それを知った男は、涙を流してクロにあやまりました。「クロ、すまなかった。おれがお前の角に油を塗ったばかりに」

得知这一切的男子,流着泪向小黑道歉。「小黑,对不起。我只是在你的牛角上抹了油」
 
それから男はクロと大グマの亡骸をていねいに葬り、そこに社を建てて二匹の供養をしたのです。

然后男子郑重地葬了小黑和大熊的遗骸,并在那里建了神社把它们供养起来。

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