中国が空前のキャンプブームにわいている。中国キャンプ場の市場規模は2021年の299億元(約6100億円)から2025年には562.1億元(約1.1兆円)に膨らむ見込みと急成長している。こうした中、中国よりも先にキャンプがはやっていた日本には、中国キャンプファンはそのやり方や商品に対して熱い視線を送っている。これは、日本と日本企業にとって見逃してはいけない好機である。

中国掀起空前的露营热潮。预计中国露营场地的市场规模将从2021年的299亿人民币(约6100亿日元)快速增长至2025年的562.1亿人民币(约1.1万亿日元)。在此背景下,中国露营爱好者将视线转移到较中国更早流行露营的日本,关注他们的露营方式和露营品牌。这对日本和日本企业来说是一个千载难逢的好机会。

そもそもなぜ今、中国ではキャンプがこんなにはやっているのか。今回は、中国キャンプ業界の専門家にオンライン・インタビューした内容を紹介しながら、日本や日本企業が今打つべき手についてヒントを提示したい。

那么,为什么如今在中国,露营如此受欢迎呢?本文将分享同中国露营行业专家进行的线上访谈内容,并针对今后日本和日本企业应采取的措施提出建议。

はやっている理由はコロナだけではない

露营热不仅因为新冠疫情

「キャンプは(中国のエリートにとって)よい社交の場だ」と語るのは、ベテランキャンパーで業界内でも影響力を持つ安さんだ。安さんは名門大学を卒業してから北京に居住しており、国内トップ企業で勤務し、2人の子どもを持つ30代。いわゆる「勝ち組」である。

安先生是一位露营老炮,在露营圈颇有影响,他表示,“(对中国精英阶层来说)露营是一个很好的社交场所”。安先生今年30多岁,自名牌大学毕业后,选择在北京生活,目前于国内一家头部企业任职,并养有2个孩子。安先生就是所谓的“人生赢家”。

美術・音楽・写真などの趣味を持ち、生活だけでなく、精神的な豊かさも求めている。これは、現在の中国の若きエリートの特徴でもある。同氏がキャンプを始めたのは2019年新型コロナウイルスの影響が日常生活に影響を及ぼし始めた頃だ。郊外の「農家楽」の多くが閉店したため、安心して子どもを連れて出かけられるところも少なくなったことだった。

现在中国的青年精英,不光追求生活富足,而且追求精神富裕,对美术、音乐、摄影等感兴趣。安先生开始露营时,正值2019年,新冠疫情开始影响日常生活。因郊区众多“农家乐”关门,能够安心带孩子们出去玩的地方减少。

そこでたまたま知った会員制のキャンプ場に惹かれた。年会費4000元(約8万円)は、安くはないが、農家楽としての癒やし、子どもの遊び場だけでなく、「年会費を払えるのはそこそこ経済力のある人で、中国におけるキャンプの先駆者たちで、いろいろな意味でフィルターがかけられたよい社交の場になる」と考え、入会したようだ。 

当时,安先生偶然间接触到了会员制露营场地,并被其吸引。该场地需缴纳年会费4000元(约8万日元),不算便宜。但考虑到露营既能够体验到农家乐的治愈,带孩子玩耍,还考虑到“这里的会员都具备一定的经济能力,同时也是露营圈子的先行者,露营是一个叠加了各种滤镜的优质社交场所”,由此选择入会。

「農家楽」について、筆者は7年前に紹介した。大都市の若者が、多忙で疲れ切る日常生活を離れ、近郊の農家(民宿)で友達や家族と悠々自適の週末を過ごす小旅行のことである。「清潔・自然・癒やし・秩序」のある日本の地方に行きたがる理由は、この「農家楽」のアップグレード版に当たるものだ。

笔者在7年前介绍过“农家乐”。“农家乐”是一种短途旅行,指大城市的年轻人通过远离繁忙疲惫的日常生活,与朋友、家人前往郊区农户(民宿)家中悠闲的度过周末。人们享受“农家乐”的原因,就类似期待“干净、自然、治愈、秩序”的日本地方行。

コロナ後、中国人は海外に行けなくなり、普通の農家楽も閉鎖したので、その代わりとしてキャンプが爆発的に人気になった。それまでの「癒やしの活動」とは違う楽しさも認知され初め、「農家楽」→「日本地方」→「キャンプ」と関心が移っていったのだ。

新冠疫情后,因国人无法出国旅行,普通农家乐也受到限制,由此露营开始爆火。自从人们认识到露营的乐趣与以往的“治愈旅行”不同,人们的兴趣便逐渐从“农家乐”转移到“日本地方”,最后到“野营”。

「今までとは違う楽しさ」とは、「社交によい」ことで実に興味深い。よく知られているように、中国人は生活する地域・生まれた年代により、価値観から行動まで大きな違いが生じている。その結果、小さい頃から一緒に似たような環境で育ってきた幼馴染や、成人後知り合った相性のよい友達とでなければ、人口の多い大都市に居ても心を許せる「場」を見つけるのは難しい。

所谓“不同于以往的乐趣”是指“便于社交”,这个点实际上非常有趣。众所周知,中国人因生活地区、出生年代不同,从价值观到行为都具有很大差异。这就导致,除非是和从小一起在相似的环境中长大的发小,或者长大后结识的意气相投的朋友在一起,否则很难在人口众多的大城市找到可以让人放下戒备的“场所”。

加えて、職場はハングリー精神にあふれ、チームワークより個人貢献が称賛されるので、自然に他人との競争意識が高くなる。このため、仕事以外では何らかの「緩い」「ほっとする」「楽しい」つながりを求めるようになっているのだ。 

再加上,因职场充满狼性文化、相较于团队合作更重视个人贡献,所以人们自然而然地会提高竞争意识。由此,人们期待在工作之外,寻找能够让自己“慢节奏”、“放松”、“快乐”的项目。

「クローズド」な集まりが人気に 

备受欢迎的邀请制团体

こうした中、中国人の若手エリートには、経済的に余裕があり、教養もそこそこあり、かつ一緒にスキルアップして楽しめるところが好まれるようになった。実は超高級ホテルの招待制ジム、名門小学校親同士限定の野球クラブ、経営者ママ友達が貸し切る華道教室などなど未公開のグループはこの数年北京や上海でじわじわと成長している。

在此背景下,中国的年轻精英因为经济富余,教养良好,更加倾向于寻找一起提升的环境。实际上,最近几年,在北京和上海,豪华酒店的招待制健身房,名门小学家长限定的足球俱乐部,面向商人妻子朋友花道教室等等非公开小组如雨后春笋般涌现。

安さんが参加した会員制キャンプ場では、それらと同じく、「厳選」された経済的に余裕がある人たちは、安心して一緒に余暇を楽しむグループを求められるわけである。

安先生参加的会员制露营营地也是如此。该营地旨在通过“严格筛选”,打造经济富裕的人们能够一起安心享受余暇的场所。

いい社交の場である以外で、安さんやほかの中国人キャンパーになぜこんなにキャンプにハマったかを聞くと、「達成感」「子ども」もキーワードとなる。

当安先生及其他中国露营人士被问到为什么会热衷于露营,他们表示露营能够提供良好社交环境,除此之外,“成就感”、“孩子”也是关键。
「テントを立てるだけでめっちゃテンションが上がる」と言うのは、とある30代の中国人女性エリートである。エリートでも普段の仕事はだいたいが決められたもので、ある意味受動的なことが少なくない。

某位30多岁的中国女性精英说道,“搭帐篷就会使人情绪高涨”。即便是精英,平时的工作基本上都是固定的。从某种意义上来说,他们被动的情况也不少。

一方、キャンプは自由だ。どこでやるか、誰とやるか、何を持っていくか、食べ物、飲み物、遊ぶところ……すべて自分でゼロから発案し、最後のゴミ回収まで実行することになる。試行錯誤しながら、手足を使い、自由自在にキャンプ時間を満喫するのは、仕事では感じられない達成感に満ち、どんどんハマってしまうようだ。

另一方面,露营很自由。在哪露营,和谁一起,带什么去,食物、饮料、游戏场地......全部都是由自己从零开始想方案,直至到最后回收完垃圾结束。整个过程一边反复试错,一边活动手脚,能够自由自在的享受露营时间,从中体验在工作中感受不到的成就感,使人渐渐地沉浸其中。

子どもも重要なポイントだ。安さんの話だと、特にコロナ禍の中、元気があり余る子どもを思う存分に遊ばせるエンターテインメントは、キャンプしかなかったようだ。キャンプの活動は、自然に近く、頭も手足も使うほか、グループ内のコミュニケーションや、ごみ処理などのマナーも習得できるので、非常によい教育になるのもありがたい。

孩子也是很重要的一点。安先生表示,特别是疫情下,好像只有露营了够让精力充沛的孩子们尽情玩耍的娱乐活动。露营这一活动,不仅能使人亲近大自然,使用头和手脚,还能够锻炼团队沟通,学习垃圾分类等礼仪,是一种非常优质的教育。这一点难能可贵。

コロナ後、親子イベントの選択肢が増え、キャンプを選ぶ親子は少なくなるかもしれないが、中国ではほぼ初世代のキャンプキッズに対して未来の市場の期待も大きいであろう。 

疫情之后,随着亲子活动的选项增加,选择露营的亲子可能会减少。虽然如此,对中国第一代露营孩子有很大的未来市场预期。

日本ブランドは「口コミ人気ナンバーワン」

日本品牌是“口碑人气第一名”

さて、中国のキャンプ市場では日本に対する憧れが実は非常に熱い。キャンパーから見れば、日本のキャンプ文化は「先生」のようなもので、憧れの存在だと思われている。安さんは日本語が堪能なので、雑誌「GO OUT」を入手するたびに熟読し、いかに書かれた内容を次のキャンプ、またはアウトドア業界でも影響力を持つ自身のSNSの発信に生かせるかを工夫しているが、その反応もとてもよいようだ。

且说,中国的露营市场实际上对日本充满了强烈的向往。露营爱好者将日本的露营文化比作“老师”一样的存在,对其心生向往。因为安先生精通日语,每逢他买了《GO OUT》这本杂志,都会熟读,下功夫把杂志中的东西应用到下次露营中去,而且会将其发到颇有知名度的个人社交媒体上,在露营界获得了良好的反应。

「日本と中国の旅行が再開したら、みんなで富士山が見えるキャンプ場キャンプ用品をいっぱい買うんだ。間違いなく」。筆者は画面越しで熱意を感じた。

“如果中日旅行重启,大家肯定会去能够看到富士山的露营地购买大量的露营用品。”笔者通过画面就能感受到满腔热忱。

日本で「本物のキャンプ」を満喫したいだけでなく、商品についても、「日本ブランドは口コミで断トツ人気ナンバーワン」と安さんは語る。デザイン?使い勝手?日本で確立したブランドイメージなど、他国ブランドより圧倒的に支持されている。

日本不光有“真正的露营”,而有露营产品,“日本品牌的口碑也是人气断层第一名”安先生说到。设计、使用便利等日本品牌形象得到了压倒性支持,远超过其他国家的品牌。

中国国内では、さまざまな事情により、M16、スノーピークなど日本のブランド商品は中国国内メーカーの似た商品より、場合によっては20~30倍も高くなるケースがあるが、「キャンプに行く人は経済的に余裕がある人がほとんどなので、ファンだったら平然と買うキャンパーは全然いる」(安さん)ようだ。

在中国国内,由于各种各样的缘由,中国国内的制造商竞相模仿M16、Snow Peak等日本品牌的商品。有时根据场合的不同,日本品牌售价甚至会高出中国产品20~30倍。“因为去露营的大多是经济富裕的人,因为自己是该品牌粉丝,有的人并不会介意昂贵的价格。”安先生表示道。 

日本のブランドに足りない視点は?

日本品牌的不足之处在于?

ただ、日本国内と中国での販売の価格差が大きすぎることや、OEM経験が豊富なメーカーも増えているので、中国国内メーカーもすごい勢いで追いかけようとしているので安易に考えてはいけない。実は安さんもキャンプ市場の成長性を肌で感じ、現在キャンパー仲間と一緒にキャンプの川上から川下まで関わるビジネスを準備している最中である。

但是,不得不考虑,商品在日本国内和中国销售时有巨大的价格差,原厂装配经验丰富的制造商也在增加,中国国内的制造商正在以惊人的速度生产廉价商品。事实上,安先生也切实感受到了露营市场的发展,现在正是开始和露营伙伴一起开创露营相关商业的最好时机。

「現在キャンプ場は毎日のように開いており、差別化へのニーズが増している。(中国の)キャンプ市場は間違いなく急成長しているが、これに対する(日本ブランドの動きは)まだ足りない」と安さんは話す。

“现在,露营场地每天都会开放,差别化需求不断增加。中国露营市场急剧发展,与之相对,日本品牌的动向却远远不够。”安先生说道。

日本ブランドは「先生」「憧れ」というだけでは物足りない。日中消費市場に詳しいレインボーアークのヒロミタン氏は、「変化の激しい中国の若者のライフスタイルを取り込むことがポイント」だと指摘している。 

日本品牌只满足于被称为“老师”被“憧憬”是不够的。对中日消费市场非常熟悉的RAINBOWS的广见丹指出,“重点是在其中融入中国青年激烈变化的生活方式”。

音楽フェス、カフェ、美術館などに対する若手エリートの「アティチュード(価値観、嗜好)」をうまく融合し、この新興市場でしっかりブランドイメージを浸透させる戦略を立てるのが、中国のキャンプ市場、アウトドア市場へのファーストアプローチであろう。

音乐厅、咖啡馆、美术馆等与青年精英的价值观完美融合,设立战略将品牌形象融入这种新兴市场,对日本品牌走进中国露营市场、户外市场有所助益。

最近円安の影響で外国人観光客による「爆買い」が再び期待されるようになっているようだが、日本の製品に高い価値があることを忘れないでいただきたい。円安でなくても買いたい、高くても自分の価値観とニーズに合えばお金を惜しまない潜在顧客が確実に存在するので、安売りより、どのように彼らの心をつかむのかを今検討すべきである。

最近,受日元贬值的影响,外国游客可能还会“爆买”。但请不要忘记含有高价值的日本产品。确实有顾客即便日元没贬值也想买,和自己的价值观以及需求合得来的话会不惜重金也会买入商品。因此,比起便宜,现在要探讨的是如何抓住顾客的心。

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