ある落語家が刑務所へ慰問に出かけた。受刑者を前に、第一声は「エー、満場の悪人諸君!」。永六輔さんの「芸人 その世界」(岩波書店)に収められている一(ひと)コマだ。

一位单口相声演员到监狱慰问演出。面对服刑人员,他第一句话就是“哎,在场的各位坏人!”。这是收录在永交辅的《艺人 艺人世界》(岩波书店出版)中的一个段话。

笑う人もいれば、「言われる身になれ」と苦る人もいるだろう。人権感覚を疑問視する向きも、あるに違いない。だが、こういう場合はえてして、背景やいきさつを知らずに判断すると、的を外すことが多いようだ。

有人觉得可笑,也有人感觉不快,“考虑一下犯人的感受!”。一定会有人从人权问题角度表示质疑。然而这种情况,如果不清楚事情的背景和前因后果就妄下断言,往往会“脱靶”。

たとえば落語家が過去にもその刑務所を訪ね、交流を重ねていたとしよう。それなら荒っぽい毒舌も、親しみをもって感じられるかもしれない。互いの間柄いかんで、言葉は丸くもなれば、とがりもする。

比如这位单口相声演员以前曾多次访问监狱,与犯人交流。那么,也许再粗暴的刻薄话听起来也感觉很亲切。视双方关系的亲疏,语言有时委婉,有时尖锐。

「地獄へ直行」と書いた紙を廊下に張って、遅刻者の指導をした中学教諭がいた。「イエローカード」「校長面談」などとも書いた紙に、遅刻の回数に応じて生徒の名を付箋(ふせん)でつけていた。配慮を欠いた指導と問題視され、校長が謝罪する騒ぎになったが、川崎市教委は先ごろ処分を見送った。「生徒との信頼関係の中での指導だった」と判断したそうだ。

有一位中学教师在走廊上贴一张纸,上面写着“直达地狱”,来教育迟到学生。根据学生迟到次数,将其姓名标签贴在写有“黄牌”“校长谈话”等内容的纸上。这种做法曾被视为欠缺考虑,受到社会关注,后来事态扩大,校长出来谢罪,最近川崎市教委表示暂缓处理。据说市教委调查后认为“(这种教育方法)是在与学生建立了信任关系基础之上实行的”。

問題が表面化すると、生徒らから市教委に、「先生を責めないで」といったメールが寄せられたという。少々荒っぽい指導でも受け入れる信頼感が、クラスにあったということだろう。

据说该问题被公开后,学生们给市教委发去了电子邮件,说:“请不要责怪老师”。 这就是即便教育方法有些粗暴仍可接受的信任感存在于班级吧。

教師の言動がいじめに結びつくこともあるから、判断はなかなか繊細だ。しかし先生たちの持っている“人間力”も封じ込んでしまう杓子(しゃくし)定規は、学校の魅力まで一緒にそいでいくように思える。角を矯(た)めて牛を殺す。そんな故事もある。

由于教师言行有时牵涉到欺凌问题,因此判断起来很微妙。可是连教师们的“人格力量”都抑制的陈规陋习会连学校的魅力一起扼杀吧。磨瑕毁玉,有这样的故事。

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