「橋のない川」を著(あらわ)した作家の住井すゑさんは、「子育て」という言葉を嫌った。子どもの管理に通じる意識を、そこに見たからである。

著有《无桥之河》的作家住井sue不喜欢“育子”一词。因为这一词中包含有管理孩子的意思。

「子どもこそいい迷惑。彼等(かれら)にとって、親という名の権力の下請人(したうけにん)によって管理される毎日なんて、たのしかろうはずがない」と20余年前の随筆に書いている。もう亡くなったけれど、政府の教育再生会議が準備してきた「子育て指南」の緊急提言を知ったら、何を思っただろう。

在20年多前的随笔中写道:"孩子们才觉得困扰。对于他们来说,由父母这一名份下的权力承包人管理下的每天怎么会开心呢”。虽已去世,如果他知道政府教育再生会议准备的《育子指南》被紧急提议的话会做何感想呢?

★【下請(け) した-うけ 】[0]  (名)ある人や会社などの引き受けた仕事を,さらに別のものが引き受けてやること。また,それをするもの。下請け負い。下仕事。又請(マタウケ)。「―に出す」「大企業の仕事を―する」 

「子守歌を歌い、おっぱいを与える」「食事中はテレビをつけない」「早寝、早起き、朝ご飯を習慣づける」「うそをつかないなどの徳目を教える」……。驚くような中身ではないが、国の提言となれば話は違う。それはたちまち価値観を押しつけ、下請け人たることを親に求める言葉になってしまう。

“要哼儿歌喂奶”、“吃饭时不要开电视”、“早睡早起,要养成吃早饭的习惯”、“教育孩子要讲道德,比如不撒谎等”……虽没有出人意料的新内容,但既然是国家的提议,那就是另一回事了。这就是想要将价值观一下子灌输给孩子,要求父母承担起监护人的职责。

さすがに国民の反発を案じる声が政府内からも出た。「待った」がかかったのは良識ある成り行きだろう。「高みにいて人を見下したような訓示とかは、あまり適当じゃない」。伊吹文科相の見解に、我が意を得たりの人は多いのではないか。

就连政府内部都有人担心百姓会反对。暂缓实施才是明智之举吧。“高高在上俯视别人似的训示之类的不太合适。”与伊吹文部科学大臣持有相同见解的人很多吧。

★【待った まっ-た】 [1] (1)碁・将棋・相撲などで,相手が仕掛けてきた手や立ち合いを待ってもらうこと。また,その時に発する語。「―をかける」「―がはいる」(2)転じて,進行中の動きを止めること。「発表に―がかかった」

自由主義教育を説いたフランスの啓蒙(けいもう)思想家ルソーに、味わい深い一言がある。「世界でいちばん有能な先生によってよりも、分別のある平凡な父親によってこそ、子どもはりっぱに教育される」(「エミール」岩波文庫)。

倡导自由主义教育的法国启蒙思想家卢梭有句意味深长的话。“能够教育好孩子的唯有通情达理、平凡的父亲,而绝非世界一流的老师。”(《爱弥儿》岩波文库出版)

分別ある父母を望むのは、教育現場をはじめ、多くに共通した願いだ。そうした願いを、薄っぺらな説教の羅列で果たせると考えているなら、再生会議は能天気に過ぎるだろう。

希望父母通情达理,这是以教育部门为首的各方共同的愿望。如果认为凭借罗列浅薄的说教就可以达成这一愿望,那再生会议就只是个乐天派而已吧。

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