東京・六本木に芋洗坂(いもあらいざか)という素朴な地名がある。江戸の昔、このあたりに青物屋があり、旧暦8月15日に大量の里芋を商いしたのが由来だ(東都歳時記)。芋は各戸で煮っ転がし、十五夜の月に供えた。

东京的六本木有一个地方,名字很朴素,叫做芋洗坂。其地名来源于,过去江户时代这附近有蔬菜店,在旧历8月15日买卖大量的芋头(东都岁时记)。各家各户都煮芋头,供奉给十五的月亮。

今夜は、芋名月とも呼ばれる中秋名月。雲さえなければ、日没前の東空に現れる。その山吹色の天体へと今、日本の探査機「かぐや」が向かっている。打ち上げから12日、旅も半ばの頃合いだ。

今夜是被称为芋明月的中秋之夜。假使没有云的话,圆月将会在日没前出现在东方的空中。现在日本的探测卫星“月亮女神”(“辉夜”)正在飞向那个金黄色的天体。自发射之日起已经过了12天,旅程近半。

「未来の資源庫」への関心ゆえか、世界的に改めての月探査ブームだという。かぐやは、表面の様子や環境を調べて月の起源に迫り、利用価値を探る。首尾よくいけば後々の月面着陸や、有人探査に道が開けるそうだ。

或许是对“未来的资源仓库”的关注吧,世界上又掀起了新一轮的探月热潮。辉夜将调查月球表面的情况与环境,探究月球起源,寻觅利用价值。据说如果顺利的话以后还可以开拓月面着陆,有人探索的道路。

月の正体が分かるにつれて、神話や俗説は葬られた。そこは荒涼の世界で、地球から見えない裏手に宇宙人が集結している気配もない。かぐやもまた、薄衣(うすぎぬ)の何枚かをはがすのだろう。

随着月球的真面目越来越为人们所了解,神话及民间传说渐渐地被埋葬。那里是荒凉的世界,在地球人看不到的背面也没有宇宙人集结的迹象。辉夜又会把本来就很薄的神秘的面纱再揭下来几层吧。

まだ夢があった頃の『竹取物語』で、かぐや姫は「おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり」と明かし、涙のうちに故郷に発(た)つ。恩人の老夫婦が残る地球は穢(けが)れの星。絶えぬ戦争や環境汚染を思えば、なかなかの洞察力だ。かぐやが送ってくる手はずの「地球の出」の動画に、私たちは何を見るだろうか。

在还有梦想时代的“竹取物语”中,辉夜姬说出自己的身世:“我本非此国中人,乃月都之人也”,洒泪飞往故乡。恩人老夫妇所在的地球是污秽的星球。想到不断的战争和环境污染,这个判断当真是很有洞察力。

人類は地球の表面をいじり、目先利便享楽を追求してきた。いじり尽くした所を都会と称する。こよいは手つかずのあばた面(づら)を見上げ、足元の厚化粧を省みるのも一興だ。そんな月見には、芋洗坂を見下ろす不夜城、六本木ヒルズあたりが絶好である。

人类兴风作浪蹂躏地球的表面,只追求眼前的便利和享乐。蹂躏殆尽的地方被成为大都会。今宵仰望那尚未被人工沾染的麻脸,反省脚下的浓妆艳抹也是一件趣事。这种赏月,在俯瞰芋洗坂的不夜城六本木山是最佳的。