日语文学作品赏析《平山婆》
明治末季
「わ」
と云って外へ飛び出した。庭では息子が薪を割っていた。息子はその声に驚いて、
「何だ、どうしたのだ」
と云って聞いたが、細君は
「おい、どうしたのだ、何かあったのか」
「お爺さんとお婆さんがおった」
と云って、細君は家の中を恐ろしそうに見た。息子はばかばかしかった。
「ばかだなあ、死んでしまった者が、どうしておる、神経だよ」
「神経じゃないよ、ほんとだよ、嘘と思や往って見るがいい」
「ばかだなあ、今の世に、そんな事があるものか」
「だって、ほんとだよ、往ってみるがいい」
細君の物脅えの顔色が治まらないので、息子はとうとう上へあがって、細君の締め残してあった
「何か云いたいことがあるかね、あるなら云ってもらおう、そんなことをせられては、みっともない」
と云うと二人の姿はぱっと消えてしまった。
夜になって細君が蒲団を出そうと思って壁厨を開けた。壁厨の中には昼間のとおりにお爺さんとお婆さんが坐っていた。細君は夫が傍にいるので気が強かった。
「そんなに、
細君は二人にかまわずさっさと蒲団を出そうとした。すると二人の姿は消えてしまった。
朝になって細君が蒲団をしまおうとしてその壁厨を開けると、また二人がその中に坐っていた。
それから昼でも夜でも、壁厨を開けさえすれば、二人の坐っている姿が見えたが、ただ坐っているばかりで何もしなかった。この壁厨の怪異は、やがて村中の評判になり、村の人はそれを
平山婆の噂があまり高くなったので、息子夫婦はそこにいられなくなって、別の炭坑地へ引越したが、そこにも爺さんと婆さんがやはり壁厨の中に姿を見せるので、又別の家へ移ったが、そこへも爺さんと婆さんは
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