关键词:覚源(かくげん) 罪人(つみびと) 説教(せっきょう)
するとえんま大王は、こう言ったのじゃ。 『覚源よ、お前をここへ呼んだのは罪人としてではない。お前も見ておったように、近ごろは地獄へ来る人間の数が増えるばかりだ。これは、生前に悪い事をすれば、死後に地獄へ落ちるという事を忘れているからではなかろうかと思ってな。そこで人々に説教する役目のそなたに、地獄の恐ろしさをよく見てもらって、ここへ来る人間が一人でも少なくなるよう人々に話してもらいたいのじゃ』 と、いうわけで、わしは地獄巡りをする事になった。  地獄ではな、どんなに苦しくても死ぬ事は出来んのじゃ。  たとえ体を切り裂かれても、いつの間にか元へ戻っていて永遠に苦しみが続くのじゃ。  重い荷物を背負って、ハリの山を登っていく人々。  熱い血の池で、もがき苦しむ人々。  地獄にはそんな人々の叫び声や、うめき声が続いておる。 『よいか、死んでまでこんな苦しい思いをする事はない。人間は、こんなところへ来てはならんのだ』 と、えんま大王が言うたんじゃ。 『よくわかりました。この覚源、残る人生をかけて、一人でも地獄へ来る人間が少なくなりますように説教を続けましょう』  えんま大王にこう約束して、わしは地獄から帰ってきたのじゃ」  その後、上人は一人でも多くの人が地獄の苦しみから救われるようにと、地獄の話を語ったという事です。