大型の消しゴムに埋め込まれたアップルウォッチのディスプレイに表示されているのは、マークシートに記入する数字――「答え」である。ボタンをひと押しすると、画面は消しゴムのデザインと同化する画像へと早変わりし、ディスプレイはほとんど目立たなくなった。

乍一看是一块超大橡皮擦,里面却藏了一块Apple Watch,上面写满了答题卡上的数字——“答案”。按下按钮,设置好的Apple Watch壁纸就和橡皮擦完美融为一体,表盘和原本的橡皮擦看起来一模一样。

これは、中国のとある業者から送られてきた「カンニングサポート動画」だ。

这就是中国某从业人员曝光的“协助作弊视频”。

中国のチャットアプリ「WeChat」に存在する日本在住者のコミュニティ内では、今年5月ごろから、「保満分(バオマンフェン)(満点保証の意味)」と書かれた投稿が散見されるようになった。決まって添えられているのが「JLPT」の文字。これは、直近では7月2日に実施された「日本語能力試験」の略称だ。投稿のひとつに、受験者に扮した筆者がメッセージを送ったところ、以下のような返信があった。

今年5月,中国社交软件“微信”中的在日中国人群聊中出现了“保满分”的宣传文案。而其中一定会有的就是“JLPT”,这是7月2日刚刚举办的“日本语能力测试”的略称。笔者假扮成考生私信了一个发布该信息的账号后,得到了如下回复:

〈試験当日、試験中にSMSで全問の正答を送信する。料金は30万円。15万円を試験日3日前まで、残りは試験後3日以内に支払ってもらう〉

“当天我们会通过短信把正确答案发给你。费用是30万日元。定金15万日元在考试前3天内付清,剩下的在考试后3天内付清”。

「新手の詐欺ではないのか」。この時、筆者はそう思っていた。

“这不是最蹩脚的诈骗吗”——当时笔者是这么觉得的。

ところが試験当日、日本語能力試験の最上級レベル「N1」の読解問題の試験時間中に、その全問の正答とされる番号がWeChatコミュニティ内で複数共有された。そのなかには、筆者がやり取りした業者が投稿したものが確かにあった――。業者が顧客獲得のため、自らの実力をアピールしているのだろうか。

然而,就在考试当天,在日本语能力测试最高级别“N1”读解问题的考试过程当中,微信群中有多人发布了试卷的正确答案。其中的确也有笔者私信过的那个账号——。这是他们在彰显自己的实力以吸引客户吗?

これは「いち民間試験での瑣末(さまつ)な話」ではない。日本語能力試験におけるカンニング問題は、日本人にとって他人事と言えない。N1の合格は、「高度人材ポイント制」の加点対象であるというのがその理由だ。

这可不是什么“普通考试的小闲话”。日本语能力测试作弊问题对日本人而言可并非事不关己。因为N1证书是日本“高级人才积分制”的加分项。

同制度は、学歴や職歴など申請者のバックグラウンドを加点対象とする。70点を超えた外国人には、高度人材として5年間の在留資格が与えられるほか、配偶者の就労が可能になり、3年後に永住許可の申請ができるなど数々の優遇措置が得られるのだ。

该制度下,学历、职业等申请者的背景能力都可以算作加分项。总分超过70分的外国人就会被视为高级人才,发放5年在留资格,而且其配偶也可在日本工作,3年后允许申请永住资格,优惠待遇颇多。

高度人材ポイント制ではN1の合格者に15点が加点される。

而N1合格可在高级人才积分制中加15分。

「不正し放題」の監視態勢

对“作弊泛滥”的监察态度

たとえば、母国で大学卒業(10点)してから自営業者として10年間働いた(25点)後、日本に資本金500万円以上の会社を設立して代表取締役に就任(10点)した34歳(10点)の外国人がいたとする。ポイント制によれば得点は55点となり、高度人材とはみなされない。ところが、N1の合格者となればここに15点が加算され、高度人材として前述の諸々の優遇措置を受けられるのだ。この15点の価格が30万円だとしたら、人によっては安い買い物だろう。

打个比方,一个34岁的外国人(10分)从母国大学毕业(10分),创业10年(25分)后,来到日本创立了一个本金500万日元以上的公司并担任董事(10分)。这样算下来,这个人有55分的积分,算不上高级人才。但如果他考过N1的话就能再加15分,可以获得上文所说的诸项优惠待遇措施。而如果这15分只要30万日元就能买到,对一部分人来说还是相当便宜的。

試験当日の不正対策も、お粗末なものだった。東大駒場キャンパスでN1の試験を受けた中国人女性が明かす。

而能力考试当天的防作弊对策也很草率。一位在东京大学驹场校区参加N1考试的中国女性表示:

「試験が終わるまで、持ち物検査などは一切なかった。スマートフォンやスマートウォッチは電源を切ってカバンにしまうよう言われたが、実際にそうするかは本人に任されていました。私が試験を受けた教室には50人ほどの受験者がいたが試験官は3人。中国の高考(カオカオ)(大学入学統一試験)の半分以下でした」

“直到考试结束都没有检查过考生的随身物品。虽然要求我们把手机手表等智能产品关机放到包里,但实际做不做都看考生个人的自觉。我考试的考场里有50个考生,监考官只有3人。监考官数量还不到中国高考的一半”。

中国のSNSには、問題用紙を配布しようとする試験官をスマホ等で捉えた写真が、複数の投稿者によりアップされていた。消しゴムに忍ばせたアップルウォッチの持ち込みなど朝飯前だろう。

很多网友在中国的社交平台上分享过自己用手机偷拍监考官发试卷的样子。看来把iWatch藏在橡皮里带进考场真的是轻而易举。

試験の運営側はこの実態を把握しているのか。日本語能力試験を国内で実施している公益財団法人日本国際教育支援協会に質したが、「その件については一切回答できない」(協会広報担当者)との返答だった。

那么,考试主办方了解这一现状吗?笔者向主办日本地区能力考试的公益财团法人,也就是日本国际教育支援协会进行了询问,但对方回答“关于此事我们无可奉告”(协会宣传负责人)。

不正への罰則も十分でないと語るのは加藤博太郎弁護士だ。

日本律师加藤博太认为,日本对作弊行为的惩戒机制不完善。

「カンニングが在留資格の不正取得を目的としたものと判断されれば、受験者と業者は入管法の『在留資格等不正取得罪』と『営利目的在留資格等不正取得助長罪』に問われる可能性があります。しかし実際には、『3年以下の懲役又は50万円以下の罰金』の偽計業務妨害罪が適用され、判例からして略式起訴や執行猶予となることも多いのです」(加藤氏)

“若作弊考生被判定为以不正当取得在留资格为目的的,则考生和协助作弊人员就有可能受到“入管法”中“非法取得在留资格罪”和“营利目的非法取得在留资格助长罪”的指控。但实际情况是,这种行为只适用于伪计业务妨害罪进行量刑,最多判处‘3年以下有期徒刑或50万日元以下罚金’,而从判例来看,大部分案例最终都是简略式起诉或缓期执行”。(加藤)

現在、日本の高度外国人材は1万5735人おり、うち65%が中国人だ。日本が受け入れる高度人材はホンモノなのか。正しい審査が望まれる。

目前日本的高级外国人才有1万5735人,其中中国人占据了65%。日本留下的真的是真正有实力的高级人才吗?大家期望的是公正的审查。

看完这篇报道,日语君要很严肃的说,证书是我们能力的体现,是学习过程和结果的证明,我们考取日语能力考证书,是为了踏踏实实掌握一门语言,为未来更好的求学和就业之路打基础。

作弊这种不正行为,对自己百害无一利,一经发现终生不可再参与能力考考试!因此,实实在在学习,踏踏实实拿证,堂堂正正的运用,才是所有日语学子应该做的事。

※本文中译文为沪江日语原创,未经授权禁止转载。

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