原稿用汉字较多
部屋に入ると、主人が語ったとおり、仔細ありげな男が古い蒲団の上に橫たわって、苦しんでいた。病状は重いようで、顔色は黃ばみ、肌は黒く瘦せていた。 その男は左門を人懐かしげに見上げると、「湯を一杯お恵みください」と言った。 左門は男に近寄って。「ご心配なさいますな。私が必ずお助け申し上げます。」 左門は主人と相談して薬を選び、自分の手で調和すると、さらにそれを煎じて病人に与えた。 また、粥を勧めて食べさせるなど、その看病はまるで血の繋がった兄弟への接し方のようで、どうしても放っておけないという左門の心情が現れていた。 その武士は左門の優しく、情け深い心に感激して、涙を流した。「これほどまでに、流浪の身をいたわってくださるとは、たとえ死んでも必ずご恩返しはさせていただきます。」 左門は武士の弱気をいさめて、「心細いことをおっしゃってはなりません。そもそも疫病とは日数に限りがあるものです。峠を越えてしまえば、命に差し障りはございません。私が毎日必ずお世話にまいりますから。」