4-1 日本留学と将来設計
すぐに帰国することも多いが、卒業後に日本で就職を希望する留学生も、毎年3.000人以上いる

卒業後の進路
留学生は卒業後、どうするのでしょうか。日本にいる留学生のほとんどは、学部4年間、研究生、修士2年間、博士3年間のどこかに所属しています。1年間の「短期留学」などのプログラムも別にありますが、大部分は日本で長い年月を過ごすことになる。そして、留学期間が終わりに近づいたとき、その後どうするか、という選択をしなければならない。実際には卒業後、次のような方向があります。
①すぐに帰国する
すぐに帰国する留学生もいる。一日も早く帰国して、勉強の成果を母国で試したい、と思うのも当然である。留学する前の仕事に戻る留学生もいる。というのは、来日前に仕事をしていたり、教員をしている留学生は多く、職場や研究所から派遣されてきている留学生もいるからである。
②さらに進学する
学部を卒業した留学生の場合、さらに進学をする留学生もいる。日本の大学の大学院に進むことが多いのだが、海外の大学院に進学する人もいる。
③研究を続ける
ポスト・ドクターという制度がある。これは大学院博士課程を修了してから、さらに日本に残り、研究を深めるというものだ。同じ大学に残る場もあれば、他の大学に進む場合もある。
④日本で就職する

日本で学んだ留学生の約8割は日本企業で働くことを希望していると言われているが、留学生はどんな理由から現在の会社に就職しようと思ったのだろうか。調査結果によると、「仕事の内容に興味があったから」が66.0%ともっとも多く、次いで、「母国語や日本語などの語学力を生かしたいから」が48.9%、「日本企業の高い技術力に魅力を感じたから」が35.5%、「日本の学校で学んだ専門性を生かせるから」が35.3%などとなっている(図表1)。
これを最終学歴の専攻別にみると、「理系」「文系」ともに、「仕事の内容に興味があったから」がもっとも多く(「理系」68.6%、「文系」64.7%)、次いで、「理系」では、「日本の学校で学んだ専門性を生かせるから」(49.1%)、「日本企業の高い技術力に魅力を感じたから」(45.1%)などと続き、「文系」では、「母国語や日本語などの語学力を生かしたいから」(59.5%)、「日本企業の高い技術力に魅力を感じたから」(29.5%)などが続く。理系では、日本の大学で学んだ高度技能を活かしたいとの意識が強いようだ。

日本での就職を希望する留学生は、それまでの在留資格であった「留学ビザ」から、「人
文知識・国際業務」「技術」等の就労を目的とした在留資格に切りかえなければならない。
図4-1は留学生からの就職を目的とした在留資格変更許可申請案件のグラフである。1989年度から増えはじめ、1992 年には前年の倍に増加している。1994 年の場合をみると、申請案件の総数に占める許可件数の割合は93.7%と高い。これは、入管法により、就労目的の在留資格が定められて、その認められる活動内容が明確に指示されていることからである。これは、日本で就職する場合、留学で学んだことが生かされる職業であるならば、留学生の日本での就職はそれほど難しくないということを意味する。しかし、ここ数年はビザは取れても採用する企業が少ないため、日本で就職しようとする留学生の数は鈍化している。だから、今年日本で就職活動をした留学生の話からもわかるが、帰国せずに日本で職を見つけるという選択は、留学生にとってとても難しい選択のようだ。そのような中でも、知人を頼りに来日した留学生の場合は、日本での就職、永住も可能性として十分考えられる。しかしあらめて日本が積極的に留学生を受け入れる意味とは何かを考えたとき、留学生が勉学終了後も母国に戻らず日本国内にとどまり続けることは、日本の留学制度の根幹を揺るがしかねない。留学生を受け入れるということは、本来日本の持つ高度な知識や技能を他国の発展のために移転することであり、それは日本で高等教育を施した人材が帰国して、学んだ知識や技術を生かした仕事に従事することで完遂すると考えられているからだ。

数年間日本で就職し仕事を覚え、日本企業とのつながりをつくっえ上で帰国する留学生がいる、、また、そのまま日本でずっと仕事を続ける人もいる。どのくらい日本にいる予定なのかについては、留学生に対するアンケート(東京外国人雇用サービスセンター、2010年)結果があります。就職が内定した留学生に聞いたところ、日本で働く予定期間は、「3年内定」17%、「5年以内」39%、「10年以内」21%、「終身」7%、という答えでした。つもり5年程度は日本で働くつもりの留学生が多いことがわかる。

それは、その地域や、その人個人の日本との関わりの深さや、関心の深さによるものと考えられるが、アジアとヨーロッパではもちろん、同じアジア諸国同士でも日本に対するイメージは全く異なっている場合が多い。日本に関する様々な先入観や偏見を持った外国人が、留学生として実際日本に滞在するようになり、日本に対するイメージはどのように変化していったのだろうか。外国人留学生にじっくり話を聞くことで、留学生たちが日本認識の変容を明らかにし、またそれと同時に日本人もいかに偏見や先入観によって「外国」を見ているかについて考えていきたいと思う。

卒業後の進路に悩む留学生
何年間の留学生であれば、そのまま帰国してまた元の生活にもどることができる。しかし、学部、大学院、研究生やパスとドクター、計10年程度在籍する留学生にとって、「帰国するか、就職するか」というのは大きな問題である。

人間関係は、日本でのつながりのほうが大きなっている。たまに帰国しても「浦島太郎」状態で、変化についていけない。就職するコネも、母国より日本のほうがたくさんある、という状態になっている。
また独身で日本にきた留学生の場合、日本人の恋人がいたり結婚したりしている人も多い。この場合は、どこですむのかが問題になる。日本にずっと残職務内容別構成比るのであれば、言語もそれほど大きな問題にはならないが、帰国する場合には配偶者や子供が母国の言葉を話せるようになるかどうかも問題となる。

いずれにしても、青春時代の5~10年ほど滞在する、ということは日本が「第二の故郷」になってしまっている。帰国すると決めたとしても、たくさんの人々との別れが待っている。韓国や中国などの近い国はいいが、南米やアフリカなどの場合には、もう二度と会えない人々がたくさんいる。
毎年、帰国時期には、留学生の気持ちが揺れる。帰国したからと言って、母国で仕事がうまくいく保証もない(文化的な習慣や専門用語の使用は、日本のほうが慣れてしまっている。)もう少しい残りたい場合でも、ビザの問題があり、ただ漫然と日本に残るわけにもいかない、ビザは問題ないのだが、授業料免除がない、学割がない、などの経済的問題が生じる。

4-1-3 留学生の就職状況

日本企業への就職を目指す留学生の直面する問題について研究の目的は,日本の企業への就職を目指す留学生の直面する問題点を明らかにすることである。少子化と国際化という文脈の中で,留学生を増加させ,就職という形で定着させる流れが強まっている(法務省入国管理局2009)。本稿では最初に,この問題の背景として現在の留学生の就職状況,日本企業が留学生に求めるもの等について,既存の資料調査をする。そこで,留学生の就職活動において困難な問題の1つとして「企業が求める高い日本語力」があることを明らかにする。企業が留学生の日本語力を測る方法の1つは,面接での受け答えである。入社してからのOJT(On the Job Training)をスムーズに進める目的で,「日本人と同等」の基準で合否が判断されると言う(古本・川口2009)。一方,既に就職している元留学生の多くから就職する上で障害であったとされているものに,SPIがある。これは,企業が留学生に対し記試験である。多くの受験参考書はあるものの,当たらない。SPIは公開されていないため,模擬試験問題を使って,その日本語の語彙について分析をする。そして,それが留学生にとっていかに困難な課題かを明らかにし,その対策の方法について1つの提案をする。留学生の場合,これまでは,一部の就職できる人が個人の力で就職するという状況で,就職支援は一般的ではなかった。しかし,最近では大学でも留学生に対し,意識的な就職支援を行って行くようになってきた(専門日本語教育学会2010)。今後,就職支援をどのように行っていくかは,研究が始まったばかりで,議論はこれからである。ここでは,就職を目指す留学生が直面する問題を明らかにすることにより,留学生が日本での就職という夢をかなえる助けとすることを目指す。2 研究の背景と目的2.1企業が求めるもの留学生が日本企業に就職する際,どのような点が障害になっているかについて留学生に対する既存の調査結果から知る。法務省入国管理局(2009)によると,平成20年度(2008年)「留学」及び「就学」の在留資格を有する外国人(「留学生等」)が日本の企業等への就職を目的として在留資格変更許可申請を行った件数は11789人であった。留学生は平成10年度(1998年)には,2000人を超す程る。そして,この数字はさらに増加する見込みである。また,日本学生支援機構(2010)の行った『平成20年度外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果』(表1)によると,学位を取った修士課程・学部の留学生のおよそ3分の1が就職していることが分かる。この数字は就職の形態が明らかではないため,早計に結論を出すことはできないが,留学生にとって日本での就職は身近なものとなっていることが分かる。

留学生の数は、この10年でおよそ倍増しており、平成22年5月1日現在、141.774人となっている、(独立行政法人日本学生支援機構JASSO調べ)一方、平成22年において、「留学」または「就学」の在留資格を有する外国人(留学生等)が、日本企業などへの就職を目的として在留資格変更許可申請を行った件数は、8.467人で、このうち7.831人が許可されています。この人数は平成2008年まで増加傾向にあったものの、平成21年からは、景気低迷による採用抑制の影響から減少している。
就職先の業種と職務内容
留学生等がついている仕事は下図の通りです。

4-1-4 日本企業が期待すること

就職活動を始めるにあたって、日本企業が留学生に、何を求めているのかを知ることが大切である。十分な企業研究を行う必要だ。まず日本の企業は留学生を採用する理由を明確する必要である。

国籍に関係なく優秀な人材を確保するため65.3%

事業の国際化に資するため37.1%

職務上、外国語の使用が必要なため36.4%

外国人ならではの技能、発想を採り入れるため9.4%

にほんでは高度な人材が集まらないため3.8%

外国人の方が人件費コストが低く抑えられるため0.7%

その他5.7%

特に理由はない5.5%

留学生に期待する将来の役割
外国人の特性や海外展開の程度が高い企業以外は、日本人社員と同様に考えている企業が約半数である。

一般の日本人社員と同様に考えている48.9%

海外との取引を担う専門人材19.3%

高度な技能・技術を生かす専門人材15.5%

海外の現在法人の経営幹部9.8%

会社・会社グループ全体の経営を担う経営幹部3.0%

その他1.1%

無回答2.3%

留学生のイメージ
定着率にマイナスのイメージを持っているとともに、仕事への意識、能力、国際的視野の広さにたいしては、プラスのイメージを持っている。
留学生を雇用するにあたって、企業は、協調性や忠誠心、日本語能力、留学生を採用した経験ある企業ABイメージのずれA-B

忠誠心がある15.7.4.810.9(%)

協調性がある26.05.220.8

国際的視野が広い38.830.28.6

仕事への意欲が高い54.227.127.1

能力が高い6.510.625.9

キャリア意識が明確できる42.027.015.0

自己主張が強い50.042.08.0

日本語能力が不足している0.839.4-8.6

定着率が低い26.335.4-9.1

日本の雇用慣行にいなじまない12.829.8-17.0

労働条件への要求が高い24.430.6-6.2