每日汉字:森鴎外「舞姫」
题目解析:
臆は胸のこと。臆も常用漢字になった。「舞姫」で「余が胸臆を開いて物語りし」と出てくる。「胸臆を開く」とは胸の内をすっかり話すこと。「舞姫」で鴎外は自分の胸臆を開いたのだろうか。2012年は鴎外生誕150年。
2、堆い
盛り上がって高いさま。「舞姫」では、エリスが妊娠して襁褓(むつき=おむつのこと)を用意する場面で「白き『レエス』などを堆く積み上げたれば」とある。なお「うず高い」という表記は、認めている辞書もあり必ずしも誤字とはいえないが、「堆い」が一般的。「堆」の字は「タイ」の音読みのみで常用漢字に入った。
3、項
首の後ろ、襟首のこと。「我眼(まなこ)はこのうつむきたる少女の顫(ふる)ふ項にのみ注がれたり」。「舞姫」で主人公がエリスに多分一目ぼれしてしまった瞬間である。エリスのモデルは鴎外を追ってドイツから来日したことが知られているが、その正体は2011年になっても新説が発表されるなど諸説ある。
4、委しい
「舞姫」での文例は「ああ、委くここに写さんも要なけれど」。エリスと「離れがたき中となりしはこの折」という場面だ。「くわしく」の漢字は常用漢字表では「詳しく」しかない。ただ求人広告でおなじみの「委細面談」から、委の字に「くわしい」という意味があることはうかがえる。
5、拉し去る
連れ去ること。「拉致」と同じ意味。「舞姫」では「任務(つとめ)は忽地(たちまち)に余を拉し去りて」と記される。仕事がたちまち自分を連れ去って、結局エリスを捨てるに至るのである。自分の責任を仕事のせいにしているとも受け取れる表現だ。拉は「ラ」の音読みで常用漢字になった。